境界線のエラー — 感情移入の強弱と生きづらさ【スカムファミリー(SCUMxFAMILY) EX】

このシリーズ記事のPart 3「仲間(イン・グループ)」と「部外者(アウト・グループ)」に対してで脳の使い方が違う、とありました。

その内と外の分け方や範囲によって、他人にどのくらい共感できるかや、その強度が変わってくるようです。

では、感情移入が強い人はそれらが分けられていないか区分けが弱いのでしょうか?
対象が人間だけでなく物、動物、虫、概念など多岐に渡る場合、また違う仕組みなのか?

「自分以外は全て障害物」と感じる人がいる一方で、「道端の石ころや枯れかけた花にまで『痛み』を感じてしまう人」も存在します。

このような人は
イン・グループ(内輪)の境界線が極端に薄い
または境界線そのものが非常に広い範囲に設定されている
という状態のようです。

対象が人間以外(モノ、動物、概念)にまで及ぶ場合、脳の中で何が起きているのでしょうか。

私は、虫も殺せないか弱いおっさんです。

室内で発見しても「ここは危険よ、お逃げ……」とかやってます。

しかしゴキブリと蚊は「すまぬ……」と言いつつやってしまいます。

脳で起きてること①|ミラーニューロンの過剰活動

「ミラーニューロン」という神経細胞のはたらきで、他者の行動や感情を見ると、まるで自分が体験しているかのように脳が反応します。

一般的な脳

自分と似た相手(人間、家族)に対して強く働き、似ていないもの(虫、機械)にはあまり反応しません

感情移入が強い人の脳

このフィルターが非常に緩いというか、感度が「最大」になっています。

このような人にとって「コップが割れること」と「指先を切ってしまうこと」の脳内反応は似ています。

「割れた=痛い」という感覚が瞬時に走るため、脳が勝手に「自分(または仲間)の一部」として処理してしまいます。

「自分と世界の境界線」が溶けているような状態です。

脳で起きてること②|擬人化の脳回路

対象が「モノ」や「概念」に及ぶ場合、「相手の気持ちを考える機能」の使い方が独特です。

人間は進化の過程で、危険の過剰検出、草むらのガサガサ音を「敵かもしれない」と推測するようにできています。

感情移入が強い人はこの機能が過敏で、無機物や概念に対しても「心」を見出す回路が常にオンになっています。

「『ぬいぐるみ』が寂しがっている」
「このままだと、この『企画案』が可哀想だ」
「今日は『風』が少し騒がしいな…」
といった感じで、本来「心」がないはずの物事に意図や感情を乗せてしまいます

このような感覚は、脳が対象を「擬似的な人間」扱いし、自分のイン・グループのメンバーとして登録してしまっているために起こります。

脳で起きてること③|HSP(感受性の処理深度)

これは「HSP(Highly Sensitive Person)」などの気質とも深く関わります。

処理の深さ

一般的な人が「枯れた花」を見たとき、脳は視覚情報として「枯れた植物」「茶色い植物」と処理して終わります。

しかし感受性が強い人は、そこから「かつて咲いていた姿」「散りゆく切なさ」「死の概念」までを一瞬で連想し、深く情報処理します。

概念への共感

対象が物理的なものでなくても、その背後にある「ストーリー」に共感しています。

売れ残ったパンを見た時、単なる「食品」としてではなく、「パン職人が朝早く起きて作ったのに、誰の口にも入らず廃棄されるまでのストーリー」や、「選ばれなかった悲しみ」という概念を想像して、勝手に胸を痛めてしまいます。

この場合、脳の使い方は「知覚」よりも「感情」や「記憶」のエリアが総動員されています

「迷惑な人」との対比

今回の一連の話の主人公?
「迷惑バーベキュー家族(閉じた間主観性)」と
今回の「感情移入が強すぎる人」
を比較すると、脳の「設定」が真逆です。

◆特徴比較表迷惑な人
(閉じた集団)
感情移入が強い人
(広すぎる共感)
境界線
(イン・グループ)
極小
(自分と身内だけ)
極大
(人類、動物、モノ、全宇宙)
フィルター強固な壁
(外部は遮断)
穴だらけの膜
(全て入ってくる)
他者の認識相手を「モノ」として扱うモノを「人間(仲間)」として扱う
生きづらさ周囲と衝突する共感疲労
(情報の入りすぎで疲弊する)

なぜ「モノ」にまで?

迷惑系とその真逆の人とでは「違う仕組みなのか?」
という疑問については
仕組み自体は同じものを使っているが、適応範囲が異常に拡張されている
という感じのようです。

通常、共感スイッチは「人間の顔」や「悲鳴」でONになりますが、感情移入の強すぎる人たちのスイッチは「形」「雰囲気」「物語性」など、あらゆる刺激でONになるように配線されています

迷惑系の方々は過去から続くバグ持ちだし、結局どっちもバグってるんですね……

進化的な意味はあるのか?

一見、無駄に疲れるだけのようにも思えますが、この特質も進化の過程で必要だったと考えられています。

ケア能力

言葉を話せない赤ん坊や、家畜やペットの僅かな変化を察知し、世話をするのに役立ちます。

道具の愛護

道具を擬人化して愛着を持ち、大切にした集団の方が、資源を無駄にせず生存率が高まった可能性があります。

アニミズム

日本では「針供養」や「ロボット葬」のように、モノに魂を見出す文化がありますが、これは社会全体の規律や調和を保つのに機能してきました。

まとめ

感情移入が強すぎて内と外を分けられない人は
世界をまるごと『自分ごと(イン・グループ)』として
捉えてしまう拡張機能を標準装備している
ようです。

このシリーズのきっかけとなった
「他者を障害物と見る人」とは対極に位置しますが
どちらも「脳の認識の仕方が偏っている」という点は共通しています。

「極端に狭いか、極端に広いか」の違いであり、どちらも現代社会で生きる上では、それぞれの生きづらさがあります。

どっちも大変なんすね。

わかり合うことはほぼほぼ不可能っぽいですが、あっちはあっちで似たようなバグで大変なんだなぁと思えば、多少は温かい目で見守れる……ことはないか。


シリーズ:スカムファミリー(SCUMxFAMILY) — 客観ってなんなのさ

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